MEI
STORY
ある日の放課後、僕は突然星野さんに声をかけられた。
「ねぇあんた今暇?ちょっと付き合ってよ♥」
初めは何かの罰ゲームか、もしくは美人局だと思った。
そうでもなければ、カースト上位のあの星野さんが僕に声をかけるはずがない。
そんなことを考えながら机の木目をひたすら目でなぞっている僕を他所に、
星野さんは迷う素振りもなく僕の手首を掴み椅子から引き剥がそうとする。
「いい場所連れてってあげるからさ~、感謝しなよ?」
彼女の動きに合わせて漂う華やかな香りが鼻孔をくすぐる。
白くしなやかな指は見た目以上に力強く、有無を言わせない。
こういう時にきっぱりと断れない自分にも、
モテると噂の女子に近づかれてドキッとしている自分にも、嫌気がさす。
でも、もしかしたら、漫画みたいに二人きりの秘密の関係が始まったりして――
なんて、現実にはありえない妄想が頭をよぎる。
バカげた期待だとは思うが、心のどこかでそれにすがる自分がいるのも確かだった。
言われるがままに連れてこられた場所に、僕は自分の目を疑った。
ネオンの灯りがぼんやりと薄暗い廊下を照らし、壁には派手な花柄の装飾が並んでいる。
受付の奥から聞こえる小さな音楽が、妙に場違いな気分を煽った。
宿泊施設だと考えれば別段身構える必要はないのだが、どうしても緊張が勝ってしまう。
「来るの初めて?大丈夫大丈夫、ここよく来るところだから~」
星野さんの無邪気な笑顔には、どこか隠された企みのようなものを感じた。
それは所謂、ラブホテルと呼ばれる場所だった。
いきなりのことで放心していると、星野さんはかがんで僕のベルトに手をかける。
拒む間もなく、淡い期待に膨らんだ己の愚息が顔を出した。
本心がそれに表れているようで、あまりの恥ずかしさに顔を覆いたくなる。
「意外といいものもってんじゃん…♥」
てっきりイジられるものだとばかり思っていたが、星野さんの反応は真逆だった。
その白い指で裏筋を撫で、腫れあがった亀頭を舐り、うっとりとした顔で肉棒を見つめている。
これは、もしかすると、さっきの妄想はあながち間違いではなかったのではないだろうか。
僕のなかで、張り詰めていた糸が音もなく切れた。
そして、理性はその断片と共に溢れ出す欲望の奔流に呑み込まれていった。